コロナ後の小売業の展望
新型コロナウイルスの世界的な感染拡大の影響を受け、ベトナムの小売業は多くの困難に直面している。だが、ベトナムの小売業界と関係者、専門家らは、今後の業界の展望について楽観的だという。このほど、ベトナムの大手調査会社ベトナム・レポート社が報告を発表した。
新型コロナの感染拡大の影響などを問う同社の直近の調査によると、ベトナムの小売企業の約42%が「深刻な影響を受けた」と答えたという。一方で、「影響はあったが、それほど深刻ではなかった」と答えた企業は50%。「ほとんど影響を受けなかった」という回答も8%あった。
報告では、新型コロナの影響による失業や減給などで、多くの消費者が一時的に家計の支出を抑えたことが、小売業の売り上げ減少の主要因だったと分析。また、運転資金の不足や、サプライチェーンの寸断などへの対応による経費増など、小売業の側にも新型コロナの直接的な影響があった。
消費者の買い物動向をみると、新型コロナの感染拡大抑制策や新たな規則の導入で、影響を受けにくいオンラインショッピングが急速に注目を集めるようになった。また、多くの消費者は、伝統的な対面販売方式の市場や個人経営の小規模商店などを敬遠し、大型商業施設やスーパーマーケット、コンビニエンスストアでの商品購入を選択したという。
この報告で、ベトナム・レポート社のブー・ダン・ビン社長は、「新型コロナで困難に直面してはいるが、専門家や小売業界関係者らは、小売業界の今後の展望を楽観視している」と総括した。
その理由として、ビン社長は、対面販売とオンライン販売などを併用した「マルチチャンネル型マーケティング」の急激な成長を指摘。迅速に変化に対応できた小売り大手のロッテマートをはじめ、ハノイ市やホーチミン市を中心に、ネット上での販売が100~200%増と急成長を記録したことを例に挙げた。
今後の小売市場の展望としては、合併と買収(M&A)も増加すると予想した。ベトナムの小売企業の約6割は中小企業で、その多くが資本金の不足に直面している。このことから、多くの企業が機会さえあれば、大手傘下に入ることも辞さないとみられている。
新型コロナの社会では、対応に小回りがきき、大人数の密集を避けられる「小規模スーパーマーケット」という経営モデルの優位性も発掘された。このような業態に投入資金を集中しつつ、消費者ニーズに合うように柔軟に変革する小売企業が多くみられることも、前向きな材料と判断された。