農業分野へのFDI誘致に高まる期待
農産物はいまやベトナムの重要な輸出品に成長している。にもかかわらず、ベトナムの農業分野への外国直接投資(FDI)はまだ少ない数字にとどまっている。ベトナムへのFDI案件のうち、農業関連の投資件数は全体の1.61%、金額ではわずか0.97%に過ぎない。海外資本を呼び込むために、優遇措置やPR展開など、明瞭な政策が必要だとの声が上がっている。
海外からの資本は低迷しているものの、農業の発展、特にハイテク農業の将来性に可能性を見出す国内企業は増えている。酪農大手のビナミルクやTHトゥルーミルク、多角経営を展開するチュオンハイ自動車(Thaco)、畜産業や飼料製造のダバコグループ、食品大手のマサン、食品・飲料製造のラビフード、不動産や農業を展開するFLCグループ、鶏卵販売大手のバーファンなどがいい例だ。
海外投資局の幹部は、ベトナム農業の将来を、「秘めた可能性はあるものの、現在の分断化された家族経営の小規模農業のままでは、質のいい海外資本の投入を呼び込むことは難しい」と見る。農業分野への投資は、悪天候や自然災害、農産物の疫病などのリスクも高い。
農業農村発展情報センターのタイン氏は、海外からの投資手順を簡略化さると同時に、ベトナム側がよりよい土地利用計画などを策定することで、FDI企業が利用できる場所を探しやすくするなどの工夫も必要だと指摘する。「FDI企業が、土地をリース活用したり、地域の農家や農業協同組合と協力をしたりしやすくなるよう、おぜん立てが必要だ。また、税制優遇措置などの行政手続き面においては、電子化も採用されなければならない」と話している。
法律面での課題解決でいえば、ベトナム政治局が、2030年までのFDI政策の改良と効率化策を盛り込んだ議決50-NQ/TWを2019年8月付けで発効したほか、ベトナム政府も昨年4月、この議決内容を実現するための具体的な行動計画となる政令58/NQ-CP号を発令した。また、今年1月1日からは、投資法61/2020/QH14が有効となり、今後のFDIに関する法律的な課題が解決され、農業分野へのFDI増加につながるとの期待も寄せられている。